〈新時代の新疆ウイグル自治区8〉観光客急増でも保護第一のキジル千仏洞

小島康誉    2023年12月2日(土) 16時0分

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中国は観光ブーム。写真はキジル千仏洞で参観順番待ちする観光客と鳩摩羅什像。

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ウルムチから列車でコルラ着、コルラ政府の歓迎昼食会に出て、車でキジル千仏洞へ。夕闇迫る頃キジル着、親友の艾尼江・克依木さん(新疆文博院副院長・新疆キジル石窟研究所書記)に出迎えられハグ。石窟いくつかを参観。仏様を拝し念仏しつつ三巡、人々の安寧と文化財の保存を願い誦経した。壁画を説明してくれたのは数日前ウルムチで「第20回新疆小島文化文物優秀賞」を授与した一人・趙麗婭副教授だった。許可えて壁画撮影。

第163窟壁画を詳しく解説する趙麗婭副教授

ドイツ隊が第76窟から持出した壁画の写真を説明

有名な第8窟五弦琵琶図、正倉院に同種の実物

保護のため炭酸ガス検知器と防犯カメラ(第17窟)

その他の写真

熱心な説明2時間。所員食堂で歓迎夕食会、艾尼江さんらとお茶で乾杯!苦労話を聞きつつ千仏洞の畑で栽培された野菜の数々を堪能。「今年3月着任、キジル20日、ウルムチ10日を基本としている。観光ブームで多い日は2000人余が参観、壁画保護のために開放窟制限・人数制限・時間制限などを厳格に行っている。他にも各種方法により保護第一で取り組んでいる。小島さんのキジルへの貢献は忘れない」…長年の交流ありがとう。

翌朝、鶏の鳴き声で起床、散策しつつ苦労した修復保存協力が脳裏に。1986年初参観し「人類共通の文化遺産」と直感、工芸品公司職員の冗談「10万元出してくれたら専用窟を作ってあげる」に対して「分かった。出す。窟はいらない」と応じ始まった物語。振込後に「募金で1億円寄贈」協議書調印。悪戦苦闘し88年89年に3000余人からの浄財1億円余を新疆政府へ寄贈、本格工事開始。その後もシンボルが必要と「鳩摩羅什像」を進言、職員通勤用バスや飲料水浄化装置寄贈、保護の重要性を訴えるため参観団度々派遣やTV番組制作・紹介本出版…2014年中国政府の大量活動を経て「世界文化遺産」。ありがたい。

朝食後に再び参観。順番待ちの観光客が階段で待機中。キジル千仏洞近くのクムトラ石窟は前を流れる河の水位上昇、壁画劣化を防ぐため一部を切取り当所で保管中、状況を視察。国民党政権から新疆を解放し、その後も残り新疆発展の基礎を築いた王恩茂元書記による「寄贈記念碑」に誦経。記念碑には浄財を寄せていただいた3000余の個人・企業名と中山太郎・上村晃史・水谷幸正・松原哲明・安田暎胤・五百木茂・須賀武・西川俊男・小山勇・森田武氏など協力会役員の芳名が刻まれている。多くの方は旅立たれた。ご冥福を祈るばかり。

参観順番待ちの観光客の行列

近くのクムトラ石窟は水位が上がり保護のため一部壁画をキジルで保存

壁画の彩色に使われた天然顔料のサンプル

花に囲まれた王恩茂元書記による寄贈記念碑

クチャへ戻り視察後、列車でコルラへ。翌日、博物館など参観し、取材を受けた後、鉄路タクラマカン沙漠一周に出発した。2024年はキジル千仏洞世界文化遺産登録10周年、新疆側が記念行事を開催するなら是非とも人生最後の参観をしたい。それには体力維持が絶対条件、ガンバルゾ~。

サプライズ:新疆から帰国後に東京富士美術館で開催中の「世界遺産 大シルクロード展」へ出かけた。入口には筆者が1986年から修復保存に協力し後に世界遺産となったキジル千仏洞の写真、ビックリ。展示品には我々日中隊が1995年ニヤ遺跡で発掘した「草花文綴織靴」と2002年ダンダンウイリク遺跡で発掘した「西域のモナリザ」も。「保存や発掘に尽力した日本人が隣にいる」と参観者は想像もできないだろう。同展は2025年2月まで福岡・宮城・愛媛・岡山・京都へ巡回予定。

■筆者プロフィール:小島康誉


浄土宗僧侶・佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表・新疆ウイグル自治区政府文化顧問。1982年から新疆を150回以上訪問し、多民族諸氏と各種国際協力を実施中の日中理解実践家。
ブログ「国献男子ほんわか日記」
<新疆は良いところ>小島康誉 挨拶―<新疆是个好地方>
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小島康誉氏コラム

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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