ファーウェイが自動車事業に本腰、第一汽車が焦点か

高野悠介    2023年12月25日(月) 8時0分

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ファーウェイは今年になって初めて自動車部門の財務指標を発表し、新会社設立や提携のニュースが相次いだ。ファーウェイの自動車部門は何を目指しているのだろうか。写真は上海。

ファーウェイ(華為技術)は2019年、自動車BU(Business Unit)を設立した。前面に出るのを控えていたが、今年になって初めて自動車部門の財務指標を発表し、新会社設立や提携のニュースが相次いだ。ファーウェイの自動車部門は何を目指しているのだろうか。

自動車事業の構成比はわずか0.3%

自動車BU(現・智能汽車解決方案BU)には設立から2022年末までに30億ドル(220億元)が投入された。現在の従業員は7000人で、間接人員を含め1万人以上が従事する。

ただし、売り上げは微々たるものだ。2023年上半期の全体売上は3109億元で、ICTインフラ業務1672億元、携帯端末1035億元、クラウドコンピューティング241億元、デジタルエネルギー242億元に対し、自動車事業はわずか10億元で、構成比は0.3%に過ぎない。そしてファーウェイ唯一の赤字部門だ。しかし、新エネルギー車作りは「前半戦は電動化、後半戦はインテリジェント化」が業界の共通認識だ。つまり、ファーウェイ得意のインテリジェンス分野の競争が激化する。後半戦へのターニングポイントを迎え、改めてファーウェイの自動車戦略に注目が集まっている。

3つの提携モデルを提示、自動車生産はせず

ファーウェイは造車(自動車生産)をせずサプライヤーに徹し、目指すのは中国のボッシュとの方針を示し、その上で自動車業界へ3つのモデルを提示した。関係はTier1~3に従って深くなる。

Tier1:ファーウェイサプライヤーモデル…ソフト、ハードのいずれかを供給。

第一汽車、長城汽車、上海汽車、東風汽車(国有企業)

吉利汽車、BYD(民営企業)

ベンツ、フォルクスワーゲン、BMW(外資企業)

合衆汽車(自動運転ベンチャー)

Tier2:ファーウェイインサイドモデル…ファーウェイと自動車メーカーの資源を融合し、共同開発。

北京汽車、長安汽車、広州汽車(国有企業)

Tier3:ファーウェイ鴻蒙モデル(スマートモデル)…ファーウェイが共同参与するEV化、スマート化プラットフォームを利用。

賽力斯(民営企業)

奇瑞汽車、江淮汽車(国有企業)

協力進展、一定の勢力へ成長

北京汽車は2017年に最も早くファーウェイと提携した大手自動車メーカーだ。2021年4月に共同開発車「極狐阿爾法S」を発表、Tier2インサイドモデルの1号車だった。しかし、これはファーウェイの成功とされ、北京汽車の存在感は薄かった。また、「極狐阿爾法S」の発表から納車まで1年半もかかり、市場の印象が希薄になってしまった。現在は「極狐阿爾法T」との2車種で、2023年11月の販売台数は3849台。

長安汽車は2021年5月、ファーウェイ、宇徳時代(CATL)との3者連合により阿維塔科技(アバター・テクノロジー)を設立した。これまでに「阿維塔11」「阿維塔12」「阿維塔011」の3車種を発表した。2023年11月の阿維塔シリーズの販売台数は4080台。

賽力斯(セレス)は2016年設立の新興企業。2021年12月にファーウェイとの共同による「問界M5」を発表し、2022年3月に納車を開始した。2022年7月に「問界M7」、2023年4月に「問界M9」、2023年10月に「問界新M7」を発表した。2023年11月の問界シリーズの販売台数は1万8827台。

賽力斯は最も「ファーウェイ含有量」が高く、ファーウェイの息子とも呼ばれる。ただし、ここでもTier1やTier2の協力企業に遠慮し、あまり表に出ないよう振る舞った。

新しいフェーズ、新会社設立へ

これらファーウェイ系の2023年11月の販売台数は計2万6756台だった。これは「造車新勢力」では広汽埃安、理想汽車に次ぐ3位にランクされる。しかし、トップのBYDは30万1903台、2位のテスラは6万5500台で大差をつけられているが、今後のビジョンが明らかとなった。

それは新会社の設立だ。ファーウェイ自動車BUの独立前夜とのニュースでメディアは大いに盛り上がっている。ファーウェイは自動車を生産しない。ただし、別会社となれば、それに縛られることはない。

ファーウェイと長安汽車は11月25日、新会社設立の合意書「投資合作備忘録」に署名した。自動車産業の電動化とインテリジェント変革の機会を共同で捉えるためという。スマートカーの研究開発、設計、生産、販売、サービスで戦略提携する。ファーウェイはスマートカーソリューションのコア技術とリソースを新会社に統合する。長安汽車の出資比率は40%未満とする。

ファーウェイは3日後の11月28日、新製品発表会において、賽力斯、奇瑞汽車、北京汽車、江淮汽車に出資要請書を送っており、さらに第一汽車の加入を期待していると表明した。

出資の行方は?第一汽車の動向が焦点

中国メディアは、「ファーウェイはインテリジェンス分野の大規模商業化の好機が来たと判断し、赤字の自動車事業を本体から切り離して新しい投資スキームを用意した。そこへ第一汽車を呼び込もうとしている」と論じている。出資要請した北京汽車、長安汽車、江淮汽車は国有自動車企業の中でははっきり言って2線級だ。

国有の雄の上海汽車は、自動車メーカーとしての魂は自ら守るとしてファーウェイとの関係をTier1にとどめ、提携には興味を示していない。広州汽車はEV子会社の広汽埃安が絶好調だ。もう1つの雄、第一汽車に白羽の矢が立つのは自然の流れだ。

第一汽車は中国最古の自動車企業で、国民車の「紅旗」「解放」を持ち、有力合弁企業の一汽トヨタと一汽大衆(フォルクスワーゲン)を有する。この第一汽車が加われば新会社の存在感は別物になり、BYDやテスラに挑む体制ができると言っても大げさではないだろう。2024年の焦点になりそうだ。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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