日本僑報社 2024年4月7日(日) 15時0分
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私が「おばあちゃんは、日本が嫌いでしょう」と言うと、祖母は私の手を握り、「でも私はね、孫娘が大好きなんだよ」と呟いた。写真は大連。
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「何を専攻しているの」春節の年始回りが嫌いなのは、久しぶりに会う親戚と話した時に、必ずこのように聞かれるからだ。
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「外国語です」。しかし、ここまでの答えでは親戚は満足しない。「そう、外国語って言うと……」と、更に問い詰められる。「ええと、日本語なんです」。先程まで好奇心満々だった親戚は黙り込んで、凍りついたような気まずい雰囲気に陥るのだ。
大学に入ってからこのようなシーンが何度も繰り返されてきた。仕方がないことだ。年に一度しか会えない親戚は言うまでもなく、そもそも我が家でさえ日本に対する偏見がある。歴史的な理由で、戦争を経験した祖母は日本に恨みを抱いており、いつも戦争のドラマを見て画面を指差し怒っていた。母の場合は少しましだが、私が日本語を専攻にしようとした時、「英語の方が就職にも役立つ」と言って私を説得しようとした。
今年の春節も、やはり親戚から「専攻は何のか」と聞かれた。「日本語だよ。日本語」と祖母が私の代わりに答えたのだ。親戚が「日本は悪い。日本語は学ぶ価値がない」と言うのを聞いて祖母は大な声で「万が一戦争が起ったら、日本人と交渉する必要があるだろう」と反論した。私が「おばあちゃんは、日本が嫌いでしょう」と言うと、祖母は私の手を握り、「でも私はね、孫娘が大好きなんだよ」と呟いた。
日本が嫌いだけれど、祖母は私を信じてくれているのだ。私が一生懸命に日本語を勉強し、学校から奨学金ももらった時には本当に喜んでくれた。私が力を注いで頑張っているなら、何らかの理由があるはずだ。その理由が解らなくても、私の努力を認め、私を支えて応援してくれるのだ。可愛い孫娘が大好きなことを憎むことはできない。それが祖母の素朴な考え方である。
祖母の態度の変化に驚かされた数日後、今度は母から急に日本に留学したいかと聞かれた。私は驚きで喋れなくなった。日本語を勉強するのにも賛成していなかった母が私の顔を見つめて「おかあさんは、本気だから」と言った。母は理由を話してくれた。母は広西壮族自治区来賓市の出入国管理所に勤めており、仕事や留学で海外に行く人たちと普段からたくさん接している。以前は深く考えることもなく、毎日繰り返す仕事でしかなかった。しかし、私が日本語を勉強するようになってからは、手続きに来た人に話しかけたりして、段々日本の状況を理解するようになった。そして、最終的に日本への留学は価値があると判断したのだ。
日本のどこが良いのだろうか。日本との友好には価値があるのだろうか。そのような疑問を持っている人が中国には多い。私の周りも例外ではなかった。しかし、私が真剣に日本語を学んでいる姿を見て祖母と母の日本への態度が段々変わったのだ。日本に対する偏見があっても、真剣に日本語を勉強している私を「原点」に、家族の一人一人が日本に友好的になれば、それはやがて他の人にも伝わっていくだろう。
翌日、友人の蘇さんからメッセージがきた。蘇さんは去年から、広西省の南寧市で毎年行われている東南アジア諸国連合の博覧会で働いているが、その時に撮った「くまモン」の写真を送って来てくれたのだ。更に驚いたことに、広西省と日本の熊本県はなんと1982年に友好提携を結んでいたのだ。日本は東南アジア諸国連合に加盟しておらず、去年が初めての出展だった。蘇さんに教えてもらうまで知らなかった。日中両国が思ったより友好的になり、より深く広い交流を求めていることを感じた。
それを伝えるのが日本語を学ぶ価値だと、ぴんと来た。両国平和友好交流の事実を客観的に伝え、日本への偏見を解消する「原点」になりたいと思う。私のような「原点」が増えていき、一人が100人、1000人、1万人になれば、今後日中両国の友好に役立つに違いないと思う。「ご家族と一緒に今年の博覧会にくまモンを見に来てください」と蘇さんは楽しそうに言った。
■原題:我が家の対日友好化
■執筆者:覃淳昱(大連外国語大学)
※本文は、第19回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「囲碁の智恵を日中交流に生かそう」(段躍中編、日本僑報社、2023年)より転載・編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。
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