<面白っ!意外?映画史(4)>「スーパーマリオはどこから来た?」ルーツは傑作サスペンス「恐怖の報酬」

Record China    2014年9月20日(土) 15時32分

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任天堂ゲームのスーパーマリオブラザーズにはモデルが存在する。フランスのサスペンス映画「恐怖の報酬」(1953年、アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督)の登場人物である。写真は中国・天津市の「スーパーマリオ」をテーマにしたレストラン。

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かつて任天堂のゲームのキャラクターである「ユンゲラー」に対して、自称超能力者のユリ・ゲラーが肖像権侵害として損害賠償請求訴訟を起こしたことがある。ただ、この裁判は結局、ゲラー側が取り下げたそうだ。

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一方、同社のゲームの最大のキャラクターであるスーパーマリオブラザーズについては、訴訟が提起されたとは聞いていない。しかし、私見ながら、これには明らかにモデルが存在する。フランスのサスペンス映画「恐怖の報酬」(1953年、アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督)の登場人物である。

主人公の名前はマリオである。演じたのは、シャンソン歌手にして個性派二枚目のイブ・モンタンで、泥まみれ、油まみれになりながらも、終始カッコいい。だから、ゲームキャラのマリオには、似ても似つかない。しかし、である。主要登場人物の1人に、フォルコ・ルリ演じるルイージがいる。ずんぐりした体型にベレー帽、ちょび髭の姿は、ゲームのマリオと、その双生児の兄弟、ルイージとそっくりだ。

このように「恐怖の報酬」には、マリオとルイージという名の主要登場人物がいる。一方、ゲームのマリオとルイージの双子の兄弟は、映画のルイージにそっくりだ。ゲームのキャラクターを編み出した作者は、恐らく「恐怖の報酬」からヒントを得たに違いない。もし偶然だとしたら、出来過ぎである。ただ、クルーゾー監督やルリの遺族が任天堂やゲームの開発者たちを訴えたという話は聞かない。

映画は、南米を舞台に命知らずの食い詰め男たちが、油田火災を消すためにニトログリセリンをトラックで運ぶというストーリーである。ニトロの爆発で一帯の酸素を奪い、瞬時に鎮火しようというのだ。アルフレッド・ヒッチコックの理詰めのモンタージュによるサスペンスとはまた違った、生理的に迫る恐怖を映像化した傑作だ。いつ爆発するか、という恐怖。それに、マリオが兄貴分と慕うならず者が、恐怖に耐えきれず人格崩壊する怖さも描いていた。これ1作で、クルーゾーの名は映画ファンの間で、ヒッチコックに匹敵するほどの重みを持つようになった。

ゲームの方は、コミカルな味わいながら、次から次へと危機がやってくるところは似ている、といってもいいかもしれない。

ところで、「恐怖の報酬」は77年、米国のウィリアム・フリードキン監督によって再映画化された。「フレンチ・コネクション」(71年)や「エクソシスト」(73年)で70年代米映画界に新風を吹き込んだ同監督だけに、公開前は期待された。だが、ふたを開けてみると、新版「恐怖の報酬」は、登場人物や背景に現代的な(当時としては)味付けが施され工夫はされたものの、オリジナルのサスペンスには到底及ばない作品だった。同監督はそれ以降も、映画ファンや評論家に注目されるような作品を撮ることはなくなった。「エクソシスト」で悪魔の怒りを買ったからだとの説もある。

川北隆雄(かわきた・たかお)

1948年大阪市に生まれる。東京大学法学部卒業後、中日新聞社入社。同東京本社(東京新聞)経済部記者、同デスク、編集委員、論説委員などを歴任。現在ジャーナリスト、専修大学非常勤講師。著書に『失敗の経済政策史』『財界の正体』『通産省』『大蔵省』(以上講談社現代新書)、『日本国はいくら借金できるのか』(文春新書)、『経済論戦』『日本銀行』(以上岩波新書)、『図解でカンタン!日本経済100のキーワード』(講談社+α文庫)、『「財務省」で何が変わるか』(講談社+α新書)、『国売りたまふことなかれ』(新潮社)、『官僚たちの縄張り』(新潮選書)など。

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