世紀の名女優キャサリン・ヘップパーンと世紀の美女エリザベス・テイラーが激突した「去年の夏突然に」(59年、ジョセフ・L・マンキウィッツ監督)は、誤訳というべきだろう。原題は“Suddenly Last Summer”で、語の順序はともかく、邦題のように訳したくなりそうだ。しかし、Lastの意味は「現在に一番近い」である。だから、1月以降8月くらいまでの時点でLast Summerと言えば、それは「去年の夏」を意味するものの、9月から12月までなら、「今年の夏」なのである。同作の背景は、夏が終わって間もない初秋くらいだから、「去年の夏」と訳すべきではない。菅原卓によるテネシー・ウィリアムズ原作戯曲の邦訳題名は「この夏、突然に」だ。
この記事のコメントを見る