<コラム>中国3隻目の空母は電磁カタパルトを装備か?

洲良はるき    2018年9月18日(火) 21時10分

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中国の軍事力に関するアメリカ国防総省の年次報告書で「中国は2018年に最初のカタパルト装備の空母の建造をはじめたと見られる」と書かれている。写真は中国の空母・遼寧。

ソ連空母ウリヤノフスクは未完成で終わるが、ソ連は崩壊する前に、すでに空母用蒸気式カタパルトの開発に成功していたといわれる。

中国はウクライナから遼寧(元空母ヴァリャーグ)のすべての設計図を取得したとされているが、遼寧以外にも、同じように、ソ連のキエフ級空母やウリャノフスク級空母についても、多くの情報をウクライナから得ている可能性が指摘されている。

003型空母は、通常動力で電磁式カタパルト(EMALS)が装備されるという推測がある。電磁式カタパルトは、アメリカの最新空母で運用されようとしている最先端技術だ。

これまでのアメリカ海軍の空母に使用されていた蒸気式カタパルトに比べて、電磁式カタパルトを使用すると、航空機の機体寿命を延ばすことができ、さらにより短時間で航空機を発艦させることができるようになる。

アメリカ軍事専門紙ディフェンスニュースが2017年9月9日付で、中国が空母用電磁式カタパルトの開発に成功したと主張している、と報道している。

電磁式カタパルトは従来の蒸気式カタパルトより多くの電力を必要とするため、空母のエンジンには原子力のものが必要だと言われていた。もしそうなら、003型空母が通常推進だとすると、電磁式カタパルトの運用は難しいということになる。

しかし、サウスチャイナ・モーニング・ポスト(2017年11月1日付)によると、中国は統合推進システム(IPS:integrated propulsion system)を開発し、この問題を解決したという。技術的取り組みは中国海軍の造船技師、馬偉明少将率いるチームによって行われた。このシステムでは交流のかわりに中電圧の直流送電ネットワークを使用するという。

システムのために蒸気ボイラーからエネルギー蓄積装置に至るまで、エネルギー供給と分配システムの完全な見直しが必要だったと、中国科学院電工研究所の軍事技術専門家である王平氏が語っている。王平氏によると、将来的にこのシステムは空母だけでなく、ミサイルや衛星、あるいは高速鉄道にも使用されるかもしれないという。

統合推進システムはアメリカの最新鋭ステルス駆逐艦ズムウォルトにも使用されているものだ。

すでに中国は遼寧省興城市にある海軍航空訓練センターで、2基のカタパルトを運用している。そのひとつが電磁式カタパルトであり、もうひとつが蒸気式カタパルトであると見られている。

2018年6月20日に中国国有企業の中国船舶重工集団が公開した写真の奥の壁には003型空母と思われるイラストが貼られていた。そのイラストで描かれた空母はスキージャンプ式ではない平らな甲板を持ち、3基のカタパルトを装備していた。この写真はネット上で話題になった。もちろんこのイラストが実際の003型空母の実態を表している保証はないが、003型空母の姿を暗示するものにはなろう。

中国の003型空母は、排水量8万トンくらいになるのではないかと複数のメディアが報道している。8万トンという大きさは、空母遼寧やその準同型艦の002型空母より大きく、アメリカの原子力空母であるニミッツ級空母よりは小さいサイズだ。一説には、中国は3隻目の空母として、アメリカの空母キティーホーク級空母程度のものを目指しているとも言われる。キティーホーク級空母は、アメリカ最後の通常動力空母だった。

カタパルト空母に対してスキージャンプ式空母の劣っている点としてよくあげられるのが、空母から発艦する艦上機がミサイル・爆弾などの装備や、燃料を多く搭載できないというものだ。

また中国空母遼寧の場合、早期警戒機としてはヘリコプターが使用されている。早期警戒ヘリコプターは固定翼機のものに比べて、滞空時間や上昇高度で劣っている。高い高度で飛べなければ搭載されたレーダーで広い範囲をカバーすることが難しくなる。

さらにスキージャンプ式空母は、固定翼の早期警戒機を運用できないと考えられている。中国の早期警戒機については、尾翼の形がアメリカの空母用早期警戒機E-2ホークアイにそっくりな、KJ-600(空警-600)という機種が、中国の航空機製造会社である西安飛機工業公司によって開発されているとの話がある。E-2やKJ-600はプロペラ機であり、そのエンジンはカタパルトなしには空母からの発艦に十分な推力を発生させることはできないとされている。

■筆者プロフィール:洲良はるき

大阪在住のアマチュア軍事研究家。翻訳家やライターとして活動する一方で、ブログやツイッターで英語・中国語の軍事関係の報道や論文・レポートなどの紹介と解説をしている。月刊『軍事研究』に最新型ステルス爆撃機「B-21レイダー」の記事を投稿。これまで主に取り扱ってきたのは最新軍用航空機関連。

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