<コラム>中国最新ステルス戦闘機J―20、年産40機の可能性も

洲良はるき    2018年9月9日(日) 16時10分

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中国のポータルサイト新浪は8月28日、中国の航空機メーカーが製造ラインを増やし、最大で年間40機のJ―20が製造できるようになるかもしれないとする記事を掲載した。写真はJ―20。

J―20の設計者は低観測性設計のすべての概念を完全には理解していないとするロッキード・マーティン社の研究主幹の発言を、シュナイダー氏は引用している。また、J―20は実際のところ、ステルス攻撃機であり、ステルスを利用して目標に十分近づき、ミサイルを発射すると、すばやく撤退するよう設計されている可能性がある、とエアフォースマガジン編集責任者ジョン・タルパク氏が書いている。

F―35はF―22より前方に対してのステルス性では優れている、というアヴィエーションウィーク誌の報道をシュナイダー氏は引用している。しかし、(全周囲の)一貫したレーダー反射断面積(RCS)ではF―35はF―22より劣るとしている。報告などが事実だとすると、F―35のRCSはおそらく、1桁から2桁はJ―20より優れており、1対1ならF―35が先に見つけて勝利できるとシュナイダー氏は主張している。これには、F―35のネットワークやデータ融合、電子戦能力などは考慮に入っていない。これらは、戦闘で大幅に優位性を増大させる要素だ。

J―20にはアクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダーが搭載されており、低RCS目標の探知能力が向上している。しかし、全てのAESAレーダーが、同じ出力と能力を備えているわけではなく、(米国と中国の)AESAレーダーは、そのステルス性、電子防御能力、電子戦能力においても違っているとシュナイダー氏は言う。F―35に装備されているAPG―81レーダーは傍受されにくいLPI(Low Probability of Intercept=低迎撃可能性)、また探知されにくいLPD(Low Probability of Detection=低探知可能性)になっている。

シュナイダー氏は、J―20には初期的な中国のAESAレーダーが装備されているが、F―35に搭載されているものと同じレベルのものではありそうにもないとしている。さらに、「空飛ぶスーパーコンピューター」であるF―35に、中国は対抗できそうにないとしている。F―35の優位性には、パイロットの状況認識能力を向上させるセンサーの統合やネットワーク性能などが含まれる。

J―20の問題点として、お決まりのように頻繁に指摘されるのがエンジンの推力不足問題だ。このことについては、前回のコラム「中国軍の大きな弱点、軍用ジェットエンジン技術の現状」にもいくらか書いた。中国は、J―20のような第5世代機にふさわしい推力を持つとされる中国製WS―15エンジンを開発している。WS―15エンジンの現状については、中国政府や軍の秘密主義が相まって、わからないことが多いが、今なお問題があるとする意見は少なくない。

シュナイダー氏は、現在のJ―20が装備しているエンジンは、推力偏向ノズルを欠いており、スーパークルーズ(超音速で長時間の飛行)や高運動性を達成するのに適切な推力がないと書いている。

WS―15エンジンについては、多くの報道はあるものの、必ずしもその内容が正確に中国製軍用ジェットエンジンの将来を表しているとは限らない。とはいうものの、あえて、最近の報道の一例をあげてみよう。

2018年9月5日付でサウスチャイナ・モーニング・ポストが、「情報筋の一つ」として、今年の終わりまでに、WS―15エンジンがJ―20に広範囲に装備できるとみられている、としている。

同記事では、他の軍関係情報筋の話として、多数のJ―20が生産される前に、WS―15の問題を解決する必要があるという。中国は現在約20機のJ―20を所有しているが、これは十分な数には程遠い。中国に最新軍用ジェットエンジンを提供する国はなく、J―20の大量生産のために、どうみても中国は国産エンジンが必要となるという。

シュナイダー氏の結論としては、全般的に見れば当分の間、J―20は米国の航空機、艦船、基地の脅威にはなりそうにもないと書いている。F―35はステルス性やセンサー能力で優れており、J―20は1対1では対抗できないが、しかし中国はさらに多くのJ―20を配備できるだろうとしている。

サウスチャイナ・モーニング・ポストの2016年12月14日付の記事が、F―22とJ―20の価格を比較している。多くの場合、中国製の兵器は米国の類似品に比べて、3分の1から5分の1は安い。米国空軍の2011年の予算見積もりでは、F―22の1機あたりのコストは1.5億ドルである。中国江蘇省にある民間シンクタンク、知遠戦略防務研究所の周晨鳴研究員によると、J―20の1機あたりのコストは、3000万ドルから5000万ドルの間になるだろうとしている。

価格以外でも、戦場で中国側が戦闘機の数で有利になる可能性のある要因は少なくない。米国と中国で紛争が起きた場合、中国本土から近い場所になる可能性が高い。その場合、地理的に中国側は自国に近い場所での戦いになり、一方で米国は本土から遠いところで戦わなければならない。また中国が自国付近に戦力を集中しているのに対して、米国

は世界中に戦力を展開している。中国と戦うときには、米国の基地は島嶼部に散在する限られた場所に限定されてしまう可能性が高い。さらには近年の精密誘導兵器などの発達で、戦いの初動では米国軍が使用できる中国近隣の限られた基地が無力化されてしまう可能性が指摘されている。

■筆者プロフィール:洲良はるき

大阪在住のアマチュア軍事研究家。翻訳家やライターとして活動する一方で、ブログやツイッターで英語・中国語の軍事関係の報道や論文・レポートなどの紹介と解説をしている。月刊『軍事研究』に最新型ステルス爆撃機「B-21レイダー」の記事を投稿。これまで主に取り扱ってきたのは最新軍用航空機関連。

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