<コラム>中国の畜産業汚染の現状、日本と違い政策が不十分

内藤 康行    2018年9月28日(金) 21時40分

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中国の農産業構造調整で、畜産業は飼育規模と品質を成長させたが、同時に家畜・家禽飼育に深刻な環境問題をもたらした。資料写真。

中国の農産業構造調整で、畜産業は飼育規模と品質を成長させたが、同時に家畜・家禽飼育に深刻な環境問題をもたらした。飼育方式や飼育コスト等が受ける影響要素として、家畜・家禽飼育過程で発生する汚水、屎尿や飼料残渣(ざんさ)等汚染物が山の様に堆積しているからだ。科学的な集中処理がなされず、生態環境に多大なダメージを与え、結局畜産業の持続可能な成長を阻害している。中国は2013年、中央一号文書ではじめて「畜禽(鳥)飼育汚染防止整備要求」を発表している。ここでは、中国の家畜・家禽飼育の汚染現状とその原因を探る。

【家畜・家禽飼育環境汚染の現状】

現在、中国の畜産業は伝統的な分散飼育モデルから規模化と集約化型飼育モデルへの転換期にある。畜産総生産量は年々増加している。2015年の畜産業総生産額は2兆9780億4000万元(約49兆円)となっており、2011年より15.56%増加、飼育の規模化も拡大している。

飼育規模化の拡大で、畜産飼育廃棄物も急増している。2015年の畜産屎尿発生量は60億トンに達している。この数年農業汚染排出総量は年々増加しているが、畜産飼育汚染排出量は農業汚染排出総量で大きな割合を占めている。

ちなみに、中国で年間発生する屎尿量は約17.3億トンで、工業分野で年間発生する工業固体廃棄物6.34億トンの2.7倍に達する。これらの畜産屎尿は適正な処理を経ず、山積み投棄されている。

2011年から2015年までの5年間、畜産飼育の化学的酸素要求量(COD)、アンモニア態窒素、全チッ素、総リンの排出量が占める農業汚染排出総量の割合は各95%、75%、60%、75%となっている。このことは、農業面源汚染の主元が畜産飼育であることを表している。

1.水源環境に対する汚染

水源汚染の由来は畜産屎尿と飼育場による汚染といわれている。現在、大多数の飼育場では畜産屎尿処理能力が不足しており、60%以上の屎尿は処理もされず直接排出されている。畜産排出物は水系に入り、そのCOD量は生活汚水と工業廃水によるCOD排出量の総和を超えている。畜産屎尿には大量の病原微生物、有機質、チッ素、リン、ヒ素、硫化元素等が含まれている。不法排出された屎尿は雨水と混じり水系に浸透し、水中溶解酸素量を低下させる。また河川や湖沼の富栄養化を招き、水生物の過度な繁殖をもたらしている。畜産屎尿は田畑を経由し有害物質を地下水に浸透させ、地下水中の硝酸塩濃度を上昇させる。環境保護部門の統計によれば、飼育による高濃度汚染が直接河川や湖沼に排出されたことで水源生態系の汚染をさらに悪化させていると指摘している。

2.大気環境に対する汚染

畜産飼育による大気汚染は、(1)屎尿の大量堆積で、チオール、硫化水素、アンモニア、インドール、有機酸、糞臭素等有毒有害物質が屎尿腐敗分解を経て大気環境に排出される。これは動物疫病を伝播し人体に甚大な危害となっている。(2)畜産飼育により温室効果ガスを発生させている。畜産業は目下、中国の農業分野における一大メタン排出源となっており、また世界第2位の温室効果ガスの由来元の一つとなっている。人の活動で発生する温室効果ガス中、約15%が畜産業に由来するとの研究報告もある。国連農業組織の予測では、世界で毎年畜産飼育により発生する温室効果ガスによる昇温効果は71億トンでCO2当量に相当すると指摘している。畜産動物中、牛は最大の温室効果発生源で、毎年畜産業メタン排出総量中、70%以上が牛に由来している。

3.土壤環境に対する汚染

畜産飼育の土壤汚染の主要構造は畜産屎尿の過度な使用による土壤の構造喪失と有害物質の土壤累積にある。飼育の規模化で屎尿排出量が増大、すでに土壤の荷重能力を遥かに超えている。農地は屎尿の過度な使用で土壤中のチッ素、ヒ素、リン等有機養分過剰は、農作物生産を阻害している。

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