<コラム>中国に進出した「あんこメーカー」の苦悩と歓喜

如月隼人    2018年11月27日(火) 11時40分

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もうずいぶん前ですが、中国に「あんこ製造工場」を作った日本企業の人に話を聞きました。進出当初は「参ってしまった」と言います。写真は上海。

ところで、中国人はルールとか規則とかいうものを与えられると、基本的に「どのように回避しようか」と考えますからね。これはもう、善悪の問題ではない。ルールとはまず、自分の自由を制約する足かせのように感じる場合が多い。ただ、規則の必要性を納得すれば、きちんと従います。規則を守った方が自分にとって得と判断すれば、きっちりと守ります。

要するに、中国人に対して「こういうことになっているから従え」と求めても効果は薄く、規則などは「どうして、そういうことになっているか」と納得してもらう必要があるということです。

中国人との意思疎通について、もうひとつ思い出したことがあります。

中国に進出した日系ホテルですが、幹部候補として中国人の大学新卒者の採用にも熱心だった。ところが、優秀でやる気満々と思える若者を採用するのですが、どうしたことか、次々に辞めてしまう。ホテルの支配人として赴任した日本人は頭を抱えてしまったそうです。

ある日、またひとり「辞めたい」と言ってきた。そこで理由を尋ねたそうです。すると、待遇に不満があったわけではなかった。「どうしても我慢できない」と言い出したのは、仕事の内容だったそうです。

日本のホテルでは当たり前なのですが、いわゆるドアボーイから客室の清掃まで、順番にやらせていた。採用された側は、「日系ホテルの幹部候補生」になれたと思ったわけです。ところが、下っ端の仕事をさせられる。「話が違うではないか」と不満を持ち、次々に辞めていったと分かったそうです。

その時の支配人は日本から派遣された人でしたが、こんこんと諭したそうです。幹部候補生だから、入社してしばらくは、すべての仕事を経験してもらうと言い、その理由は「君が幹部、つまり管理する側になる。そうしたら、下の者がどんな仕事をしているか熟知している必要がある」と説明しました。

さらに具体的に「現場で働く者に不正や怠慢があるかもしれない。逆に、管理側に問題があって、不満を持つかもしれない。そういうことを適正に判断して処理せねばならない。君のことを幹部候補生と考え、将来は支配人をしてもらう可能性もあると考えるからこそ、すべての仕事をしてもらっている」と話したそうです。

その中国人は納得し、熱心に働くようになったとのことです。

やはりこの場合も、最初は与えられた仕事に納得していなかったから、問題が出たわけです。納得してもらったら、問題は解消した。

中国人と日本人の発想が違うのは当たり前です。特に中国人の場合には納得しているかしないかで、動き方が極端に違ってくる場合がある。このことは、覚えておいて損はないと思います。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

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