実りつつある日中の科学技術交流―藤嶋昭(東京理科大学栄誉教授)

Record China    2019年5月31日(金) 14時0分

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東京理科大学の元学長である藤嶋昭栄誉教授は光触媒研究の権威として知られ、その光触媒技術はすでに医療の現場やガラスの曇り止めといった日常生活でひろく活用されているものである。

私は、学生には本を読んでほしいと思っています。つまり、「専門に強い」プラス「一般教養」です。研究のヒントはいろいろなところから得られますが、それは、やはり本を読んだり、いい絵を観たり、いい映画を観たり、あるいは自然の素晴らしい景色を観ることで、そこからいろいろな発想を得るわけです。センスを磨かなければダメです。センスがないと、いい研究ができません。それには専門を強くすることと、広くいろいろな知識を持ち、関心を持つことです。そのために、本を読むようにと指導しています。

<日中の研究費の投入差が大きい>

――先生は早い時期から、中国の留学生を受け入れ、日中の学術交流に取り組まれてきました。先生が教えた留学生の多くが帰国後中国科学界をリードしています。こうした中国の留学生の人材育成についてお聞かせください。

藤嶋:JST(科学技術振興機構、濱口道成理事長)でつくっていただいた本に、私のところへ中国から留学生が何人来たかというのが全部まとめてあります。38名です。その後も増えていますから、もう40名になるでしょう。みんな頑張っていますが、その中の8人が、私に対する印象を中国語と日本語で書いてくれています。

私たちの研究室では、一番いい成果、一番いい論文をどこに出すかというと、イギリスの『Nature』誌です。『Nature』に出したことによって、みんな博士(ドクター)を取っています。その中で一番思い出深いのは、『人民日報』の国際版で、姚建年君が大きく紹介されたことです。それが出たので、彼はもう威張って中国に戻りました(笑)。


――先生はJST中国総合研究センターのセンター長を務められました。現在の日本の科学技術振興について、グローバルな観点から、どのような課題があるとお考えですか。

藤嶋:今、中国は科学技術がすごく進んでいます。人口が日本の10倍で、優秀な人が10倍いる。そこへ中国政府がお金をすごく出しています。研究者にたくさんの助成を行っています。日本も一応、中心の研究者には出していますけれども、研究費が少なく、その点が心配です。基礎の力の部分で、例えば日本中の先生方が一生懸命研究しなければいけないのに、研究費が少な過ぎます。それが一番問題です。

中国の場合は、私が見ている範囲ですが、すごい額の研究費が投入されています。しかも競争をうまくさせています。いい論文を書いて、いい雑誌に載らないと教授になれない。それがもう徹底しています。分母が大きくて優秀ですから、脅威ですよ(笑)。

<「物華天宝 人傑地霊」>

――先生は、科学技術の最終目的とは「天寿を全うする」ことだと言われています。それは中国の有名な言葉「物華天宝」(「豊かな産物は天の恵み」の意)につながるとも言われています。科学者として、先生の人生観・人間観を教えて頂けますか。

藤嶋:科学者は、何のために研究するのか。それは、全ての人が健康で快適な空間のもとで寿命を全うするためです。そのための場所や雰囲気、それを私たち科学者はつくらなければいけません。ですから空気や水をきれいにしたり、除菌や滅菌をしたり、それから食料がちゃんとあるようにしなければいけません。

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