<コラム・莫邦富の情報潮干狩り>米中軍事対峙に隠された衝突の火種

莫邦富    2020年12月28日(月) 10時0分

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米国大統領の交代まですでに1カ月を割った。アメリカの憲法は、1月20日正午に新たな大統領の任期が始まると定めている。写真は南シナ海。

「でっち上げだったトンキン湾事件が発生して56年経った今、朱教授が心配しているのは、第二のトンキン湾事件の発生だ」と私は昨年、発表したコラムの原稿にこうまとめている。しかし、トランプ氏はすでに大統領戦に負けたが、米中間の軍事的衝突の危険性はむしろますます高まっている。

■米駆逐艦の南シナ海航行に中国解放軍が出動、そして…

香港在住のジャーナリスト紀碩鳴氏が最近、発表したレポートは間違いなくその危険性を指摘している。

12月22日、米海軍第7艦隊の駆逐艦「ジョン・S・マケイン号」(USS John S.McCain、DDG-56)が航行の自由行動を行うと称して、南シナ海を航海した。いうまでもなく中国の解放軍も出動して対応した。米中双方とも軍事対峙(たいじ)の詳細を明らかにしていないが、衛星写真によると、両国の軍艦は前後約300メートルしか離れていない。

マケイン号は南シナ海の「常連」である。同艦は10月9日、西沙諸島一帯で活動していた。中国側は領海に侵入したことを指し、解放軍の海空兵力を駆使して駆逐したという。同艦は18日夜に台湾海峡も航行した。その続きとして、20日、解放軍空母「山東号」とその護衛艦群が台湾海峡を航行した。

12月22日、中国はもう一つの軍事行動も実施した。

米中が南シナ海で対峙しているとき、中国軍機「轟6K機」4機とロシア軍機15機が東シナ海を巡航し、韓国の防空識別圏に飛び込み、韓国を緊張させた。韓国外交部は遺憾の意を表明し、再発防止を呼び掛けた。

中国側の報道によれば、中ロ空軍が共同編隊を派遣し、日本海と東シナ海の関係空域で共同巡航をした。飛行期間中、両国の空軍機は国際法の関係規定を厳格に遵守し、他国の領空には進入しなかった。韓国軍側も、中国側が軍機進入前に韓中両国間の直通電話を通じて定例の訓練計画であることとして韓国側に通報した。韓国軍も中国軍機が飛来する前から空軍戦闘機を出動させて正常な戦術措置を取っていたと明らかにした。しかし、中ロ軍機が防空識別圏に突入したことに対して、韓国軍はやはり緊張感を覚えた。

さらに、台湾西南部にも3機の解放軍の軍機が進入し、台湾側の軍機と対峙した。台湾のパイロットが通話中に暴言を吐いたほど、緊張が高まっていた。

朱建栄教授が心配していた米国の「非常手段」つまり第二の「トンキン湾事件」だが、最近の米中軍事対峙がエスカレートしてくるのに従って、その可能性が逆にますます心配されるようになった。ジャーナリスト紀碩鳴氏のレポートはまさにその「擦槍走火」の可能性が増長している現実を浮き彫りにした。幸いなことに、少なくとも軍事対峙の第一線にいる米中双方の軍人は比較的抑制した態度を保っている。こうした予断を許さない緊張感はおそらく米国の新大統領が就任したときまで、つまり来月の中旬まで続くだろう。平和は一番貴いものだと噛みしめている今頃だ。

■筆者プロフィール:莫邦富

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。
知日派ジャーナリストとして、政治経済から社会文化にいたる幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭」といった新語を日本に定着させた。また日中企業やその製品、技術の海外進出・販売・ブランディング戦略、インバウンド事業に関して積極的にアドバイスを行っており、日中両国の経済交流や人的交流に精力的に取り組んでいる。
ダイヤモンド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」、日本経済新聞中文網にて「莫邦富的日本管窺」などのコラムを連載中。
シチズン時計株式会社顧問、西安市政府国際顧問などを務める。

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