アジアの窓 2021年12月31日(金) 19時30分
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正に光陰矢の如し、新型コロナと米中対立に翻弄された2021年はあっという間に過ぎ去り、新たな年を迎えます。
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■各国には自らの制度を決める権利がある
最近の世界の動きを見ていて思うのは、国際社会公認の原則が乱暴に踏みにじられている事です。その1つは「内政不干渉」の原則です。各国とも、多かれ少なかれ、国内にさまざまな問題、矛盾を抱えています。それらの問題、矛盾をお互いにあれこれと口を出し合ったら、世界は大混乱に陥るでしょう。例えば、米国には根強い黒人差別問題があり、英国にはスコットランドの分離独立問題があり、日本には非常に複雑な沖縄問題があります。これらは、その国が解決するしかないのです。香港に問題と矛盾があれば、それは中国自身が解決するしかありません。香港は中国の領土であり、中国の内部問題だからです。もし中日首脳会談で、中国の首脳が沖縄問題についてとやかく言えば、内政干渉です。同じく、日本が香港問題に口を挟めば、明らかな内政干渉です。
世界がグローバル化する中で、私たちが学んだのは、「多様化」という問題です。世界は広く、多様です。世界には資本主義国もあれば、社会主義国もあります。宗教が中心の国もありますし、国王が君臨する国もあります。同じ資本主義国でも、政体は多様です。英国には女王がいます。米国は大統領制の議会制民主主義であり、日本は象徴天皇制の議会制民主主義です。どのような制度を選択するかは、その国の国民が決める事です。制度の比べ合い、貶し合いなど、全く不毛な議論です。それぞれの国の国民が、自国に合った制度を選べばよいのです。民主主義のあり方も多様だと思います。民主主義の普遍的原則を踏まえた上で、それぞれの国が、自国に合った民主主義の形態を追及するのは当然です。民主主義制度は、「制度のための制度」ではありません。国民が平等で幸福になる、そのための民主主義です。その意味では、すべての国は、より良い民主主義を求める過程にあります。完璧な民主主義など、何処にも存在しません。いま多くの国で「格差」が問題になっています。富める者と貧する者がいて、その格差は多くの国で拡大しています。このような状況が存在していては、本当の民主主義国家とは言えません。全ての国は「民主主義発展途上国」なのです。今必要なのは、それぞれの国が謙虚に、他国の良いところを取り入れて、自国に合った、より良い民主主義を確立する努力をする事です。
■国際主義こそが人類運命共同体の土台
私は新型コロナの爆発的感染拡大を目の当たりにし、感じた事があります。それは、人類が滅亡するとしたら、3つのケースだろうという事です。1つは大規模核戦争、2つ目は超強力なウイルスの爆発的蔓延、3つ目は激烈な気候変動、自然災害です。これらに対処するには、1つの方法しかありません。それは国際社会が、人類が一致団結し、共同対処する事です。
いま多くの国で強調されているのは「愛国主義」です。それぞれの国民が自国を愛するのは当然です。しかし、愛国主義の、過度な強調は、往々にして狭隘な民族主義を生み、狭隘な民族主義の行き着く先は排外主義です。いま国際社会で必要なのは国際主義だと思います。愛国主義と国際主義の結合こそ、正しい道です。国際主義無き愛国主義は狭隘な民族主義を生み、愛国主義無き国際主義は外国崇拝を生みやすいのです。この問題を考えるとき、私は天安門に掲げられた2つの標語が頭に浮かびます。向かって左側が「中華人民共和国万歳」、右側が「世界人民大団結万歳」です。前者は愛国主義のスローガン、後者は国際主義のスローガンです。これこそ中国社会主義の向かう先だと思います。「一帯一路」にせよ、「人類運命共同体」思想にせよ、国際主義が無ければ実現は出来ません。
■日本は米中の協調・協力体制の確立に寄与すべき
2022年は中日国交正常化50周年の記念すべき年です。ところが、いま中日関係は好転するか、さらに悪化するかの岐路に立っています。外交、安保を米国に頼り、経済は中国と切っても切れない関係にある日本の「最も良い状況」とは何でしょうか。それは、米中関係が安定し、協調、協力面が拡大する事です。それならば、日本の選択肢は1つです。米中の協調、協力体制確立に寄与する事です。そのためには、一方に与して、一方に対抗するようなスタンスを採らない事、そして米中に対立が起き、矛盾がエスカレートした時は、日本が間に入り調停し、対立と矛盾の緩和を図る事です。
2022年の中日関係、国際情勢が少しでも平和と安定の方向に行く事を願います。
【プロフィール】
西園寺 一晃(さいおんじ かずてる)
1942年、政治家・西園寺公一氏の長男として東京都に生まれる。
1958年、一家で中国に移住し、10年間北京市で過ごす。
1967年、北京大学経済学部政治経済科卒業。同年、日本に帰国後、朝日新聞社に入社し、同社調査研究室に勤務。
日本中国友好協会全国本部副理事長、参与、東京都日中友好協会副会長、工学院大学孔子学院学院長などを経て、現在は東日本国際大学客員教授、北京大学国際関係学院客員教授、公益社団法人日中友好協会顧問。
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