コンビニの商品に爆笑、おかしな日本語から考える「言葉の調理法」―中国人学生

日本僑報社    2023年2月11日(土) 11時0分

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近づいて見ると、なんと日本語訳は「魚を連れて」ということだった。

先日、学校のコンビニへ買い物に行った。コンビニには即席の太刀魚が売っている。太刀魚は中国で「帯魚(ダイユー)」という。パックには中国語で「帯魚」と書かれていて、その下に日本語の翻訳もついていた。近づいて見ると、なんと日本語訳は「魚を連れて」ということだった。(※中国語の“帯”は「連れて」という意味がある)

それを見て、一緒に買い物に来たクラスメートはみんな口々に笑いだしたが、私はひとり物思いに耽ってしまった。みんなも日本語学科の学生だから、そのミスに気づくのは当然だが、日本語がわからない中国人が見たら「帯魚」は日本語で「魚を連れて」と思うに違いない。

翻訳ソフトによる翻訳ミスだろうと思い、寮に帰って翻訳ソフトで翻訳してみたらちゃんと「太刀魚」と翻訳されたが、試しに「帯」と「魚」を別々に翻訳して組み立ててみると、「魚を連れて」の訳文が出てきた。なぜ翻訳した人はこのように漢字を別々にして翻訳したのか。

この「即席帯魚」は「蒲焼き味」で、「蒲焼き」は元々日本の調理法である。恐らく、商品を日本風にみせるためパッケージに日本語を「飾り」として書いたのだろう。「太刀魚」は日本語といえば日本語だが、漢字で書かれているだけではまだ中国語めいた感じが残る。もっと日本語らしくするために漢字だけではなく平仮名をまぜた言葉にしたい。パックに「魚を連れて」とデザインした人は、きっとそのように考えていたのではないか。

いま中国では、このような所謂「飾り付けの日本語」が想像以上に多い。国交正常化以来、中日交流が益々深まると共に、一衣帯水の中国と日本は、経済貿易はもちろん、飲食や日常生活に至るまで様々な分野での交流が盛んになり、それに伴い日常生活の細かいところにまで翻訳者の需要が急速に高まっている。

とはいっても、ほんの少しの翻訳のために翻訳者を雇うことも無茶な話で、そのような場合に翻訳ソフトを使うのは便利な方法だが、翻訳ソフトはあくまでも機械なので、人のように心を入れて翻訳できない。その故、街中にこのような誤訳があふれていると考えられる。では、翻訳ソフトしか使えない状況下でどうやって意味の正確性を確保するのか。ここで、私はいくつかの考えがある。

中国で魚料理というと、「空蒸し鱸」などのように魚の原型を保ったままの料理が多い。それに対し、日本の魚料理は「鰻かば焼き」「刺身」「切り身」など魚の頭を見せない料理を思い浮かべる。これは「句の頭」つまり主語がなくなる日本語とよく似ている。そのことからも、日本の魚を中国の調理法で料理するなら、一旦、頭を保留したほうがいい。それは、翻訳ソフトに中国語の原文を入力する際、主語を保留、添加しなければならないということだ。

それから、日本語には「平仮名」と「片仮名」という独自の文字があるのだから、漢字をそれらの文字に変換してみるのもいい。サーモンは煮ると風味が損なわれると思うのであれば、調理法を変えて刺身にするという風に、翻訳の結果に満足できないなら同じ意味の別の言い方に変えればいい。

「太刀魚」がだめなら翻訳ソフトの仮名振るや英語検索の機能を使って、「たち魚」や「カットラスフィッシュ」に変えてもいいじゃないか。言語は言葉の調理法であり、それは様々なバラエティーに富んだものだといえるが、その言葉に相応しい料理法を使ってこそ、言葉本来の魅力を発揮できる。そして調理の最後に味を確認するように、中国語への再翻訳をして意味の正しさをもう一度確認してみるのも忘れてはならないだろう。

「料理をするように翻訳する」。中日翻訳の誤訳に関するこのような解決策は、一見つまらないものに思えるかもしれない。しかし、この小さな考え方が、今後の中日交流に少しでも繋がれば幸いだと私は考えている。

■執筆者:楊睿倫(ハルビン工業大学) 「言葉の調理法」

※本文は、第18回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「日中「次の50年」――中国の若者たちが日本語で綴った提言」(段躍中編、日本僑報社、2022年)より転載・編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。


※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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