日中は科学研究で積極的な連携を―野依良治(名古屋大学特別教授、科学技術振興機構研究開発戦略センター長)

Record China    2019年6月3日(月) 6時30分

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日本は生命科学、環境問題など、多くの分野でリーダーを輩出し、ノーベル賞受賞者も毎年のように出している。

日本は生命科学、環境問題など、多くの分野でリーダーを輩出し、ノーベル賞受賞者も毎年のように出している。デジタル革命あるいは第4次産業革命と言われるイノベーションの時代を迎えて、これからの科学研究者の使命とは何か、どのような科学研究のあり方が求められているのかを、ノーベル化学賞受賞者である野依良治氏に語っていただいた。(聞き手は『人民日報海外版日本月刊』編集長・蒋豊)

<ノーベル賞受賞の意味>

――野依先生は2001年に化学賞を受賞されましたが、ノーベル賞受賞というのは、科学者、所属大学、ひいては国家にとって、どのような意味を持つのでしょうか。

野依:世界には多くの著名な賞があって、顕彰の趣旨はさまざまです。ノーベル賞は大変に名誉ある賞ですけれども、その1つにすぎません。ただ、ノーベル財団(1900年設立)は、1世紀を越えて、アルフレッド・ノーベルの遺言に忠実であるべく、たゆみない努力を続けてきました。その揺るぎない伝統が、科学の健全な発展を促してきたということは間違いありません。そして、受賞の機会は、国籍を問わず、また有力な大学や研究機関の研究者だけではなく、全ての人に開かれています。また、ノーベル財団では、時代の流行ではなく、独創的な発見や発明を特に評価しているように感じます。これはとても大事なことです。

したがって、国家の話が出ましたけれど、日本も含む多くの国で、報道メディアが大騒ぎをして、国威高揚のために受賞の数を競うことは、好ましくないと思います。確かに受賞者が続けて出るためには、国として一定水準の教育や研究環境を用意しなければなりません。しかし、過度に政治的に、あるいは経済的に圧力をかけると、必ず研究者の自由や研究社会の自律性、あるいは規範をゆがめることになります。ノーベル賞の科学3賞(生理学医学賞、物理学賞、化学賞)について、受賞の歴史を見てみますと、その時代の国力と一定の相関関係はありますが、確固たる因果関係は必ずしもありません。強い国力がなければノーベル賞の機会がないのかというと、そんなことは絶対にありません。

もう少し言いますと、科学研究には、最初に萌芽的なものがあり、それから成長し、そして花が咲いたり実がなるという段階があります。大学に求められる最も大事なことは、個人による研究の萌芽です。若い大学人は、ほかの人から与えられた課題を解決するのではなく、自分でいい問題をつくらねばなりません。そして、未知に挑んだ結果、失敗したとしても、そこに名誉を与えなければいけない。そういう風土というか土壌をつくることこそが国家の責任だと思います。

少子高齢化現象の科学技術界への影響>

――日本は科学技術立国を掲げていますが、国の科学技術研究開発に関する予算は減少しています。日本の科学技術の課題は何だとお考えですか。

野依:研究の生産性は、量であれ、質的であれ、3つの要素が関係します。研究開発投資額、研究人材の投入量、それからイノベーション効果です。

ご承知のとおり、この20年間、日本では高等教育と科学技術の政府予算にほとんど伸びがありません。これでは、巨大な投資拡大を行う中国は例外としても、着実に支援を続けるアメリカや欧州などに拮抗できません。それとともに、資金配分の質が低い。特定の分野、組織、人に集中し過ぎる感じがしています。

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