日中は科学研究で積極的な連携を―野依良治(名古屋大学特別教授、科学技術振興機構研究開発戦略センター長)

Record China    2019年6月3日(月) 6時30分

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日本は生命科学、環境問題など、多くの分野でリーダーを輩出し、ノーベル賞受賞者も毎年のように出している。

2番目の要素である研究人材ですが、これは企業を中心として70万人近くいて、相当大きな数です。しかし、あまりに均質で、多様性に欠けるという問題があります。

近年の研究の生産性の低さは、個人の問題というよりも、主として最後のイノベーション効果の欠如の結果です。言い換えれば研究教育、システムが危機的状況にあることです。

その第1は、人材の量と質の問題です。社会のあらゆることに関することですが、現在の日本の最大の問題は少子高齢化です。これが科学技術界にも大きな影を落としています。18歳人口が、1992年には205万人でした。ところが2016年には118万人で、40%減になりました。科学の進歩は、間違いなく若い世代が担うわけですが、日本の大学では40歳未満の教員が全体の25%しかいません。中国では44%、ドイツは51%で、日本はあまりに少ないのです。しかもこの貴重な若い人たちが独立しておらず、いまだに年配の先生の指導のもとに研究をしている。この徒弟制度は非常に大きな問題です。若い優秀な人たちを育てて、独立させて、そして十分に力を振るってもらうことが大事です。

第2は、国際交流の不調です。グローバル化時代にもかかわらず、国際的な頭脳循環(brain circulation)がうまくいっていません。現在、アメリカの大学で毎年5000人以上の中国人が博士号を取っていますが、日本人は僅か170人くらいです。アメリカは多様な人種の集まりです。残念ながら日本は国際人脈が形成できず、諸外国との共同研究が十分に行われない状況にあります。

つまり、財政支援の格段の拡充を、ぜひ政府に求めるべきですが、国際水準の研究者がまったく足りません。ですから若手や女性、それから外国籍の人たちを、独立した研究者として登用する。そういったシステムの改革が早急に行われなければなりません。

――若手の人材育成について、どのように考えていらっしゃいますか。

野依:中国の「海亀政策」にならうべきです。同じところにとどまる研究者は成長し難い。いろんなところに行き、新たな体験をし、それを糧として発想がひらめくわけです。ノーベル賞を受けた人は、受賞時に平均して国内外の4.6機関を経験しています。山中伸弥先生は5カ所目で受賞されました。神戸大学、大阪市立大学、アメリカのUCSFグラッドストーン研究所、奈良先端科学技術大学院大学、そして京都大学です。昨年の受賞者の本庶佑先生は、京都大学出身ですが、アメリカのNIH(国立衛生研究所)に行き、帰国してから東京大学を経て、大阪大学の教授になり、そして京都大学に戻ってからの受賞です。

<「共創」が求められる時代へ>

――中国は今、新たな産業政策「中国製造2025」を発表し、次世代情報技術、人工知能やIoTなどを重点分野とした取り組みが世界からも注目されています。

野依:「中国製造2025」を日本語訳で拝見しました。「製造業は国民経済の基盤であり、国家存立の根本であり、国家振興の神器であり、強国になる基礎である。……世界の強国の興亡、中華民族の奮闘の歴史は、『強い製造業なしには国家と民族の繁栄もない』ことを物語っている」とあり、歴史と現状を俯瞰した上で、ものづくりの重要性を改めて強調しています。以下、具体的に戦略の方針と目標を設定して、戦略の任務と重点を定めています。要は、工業化と情報化の融合で、各省、自治区、各部委員会や直轄機構に対して、真剣に実行貫徹することを求めています。これを読んで私は、国民に伝える国家の意思が明確であることに強い感銘を受けました。

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