Record China 2019年6月3日(月) 9時30分
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元駐中国大使で、公益財団法人日中友好会館顧問である谷野作太郎氏に、これまでの日中関係と今後の方向性、習主席訪日への期待、そして日中科学技術交流の重要性などについてお話を伺った。
米中関係について言えば、トランプ大統領のやり方は間違っています。これが、中国や日本の経済はもとより、米国も含めて、世界経済に及ぼすマイナスの影響は決して小さくありません。他方、中国にはWTOのルールにもとる所作(例えば、中国企業に対する補助金の問題)もなくはありません。とすれば、議論の場をジュネーブ(WTO)に移して、そこで、議論、決着を図るべきです。もっともトランプ大統領はそのようなマルティ(多数国間)の場での議論には極めて後ろ向きというもう一つの厄介な問題があります。また、その肝心のWTOの仲裁委員会を大幅に強化しなければならないのですが、これも今の米国の政権が邪魔だてをして、全く進んでいないという問題もあります。
<日中は共通の利益にこそ目を向けるべき>
――2018年10月、習近平主席と安倍総理は「競争から協調へ」など、日中関係の3原則を確認しました。今後の日中関係の方向性をどのように見ていますか。
谷野:日本と中国は、お互いにまごうことなき世界の大国同士です。とすれば、日本と中国は狭い意味での日中関係(貿易、投資、「歴史」問題…)に閉じこもることなく――それも重要であることは否定しませんが――いま少し視野を広げ、両国が協力して、或いは協議の上、役割を分担して、アジア、世界の平和と発展に向けて何が出来るか、ということを考えるべきです。
1998年、江沢民主席が訪日された時、発表された「共同宣言」には、つぎのようなくだりがあります。
「双方(日本と中国)は、日中両国がアジア地域及び世界に影響力を有する国家として、平和を守り、発展を促していく上で重要な責任を負っていると考える。双方は、日中両国が国際政治・経済、地球規模の問題等の分野における協調と協力を強化し、世界の平和と発展ひいては人類の進歩という事業のために積極的な貢献を行っていく」。これは当時、中国側の主張で書かれたものです。
テーマはいくらでもあります。中国も含めてアジアの環境問題、北朝鮮問題、軍縮問題、国連改革、日本と中国も含めたアジアの高齢化社会への対応、アフリカの貧困問題への日中協力の取り組み等々です。しかし、残念ながら、現在までのところ、日中の政治、外交関係が足かせとなって、この面で期待される協力はほとんど進んでいません。
その意味で、昨年の李克強総理訪日の折、両国が第三国におけるインフラ建設等の分野で協力してゆくことが合意されたことは、歓迎されることでした。
日中関係は、故周恩来総理がよくおっしゃっていたように「求大同、存小異」、お互いに「小異」にふり廻されることなく、共通の利益にこそ目を向けるべきです。
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